恋人は隠れ既婚者【前編】
私のお腹の中に赤ちゃんがいる。
彼と私の赤ちゃん。
二人の子供。
授かった小さな命。
少なからず、妊娠する可能性はあったはずなのに、たった二回目のエッチで妊娠するなんて思いもしなかった。
『今夜、彼に話すんでしょ?
電話ちょうだいね』
「…うん」
帰り際、幸恵に声をかけられて、今にも泣きたくなる気持ちを抑え返事をした。
泣いたって何も解決しない。
帰宅してから、ずっと考えていた。
子供達と会話を交わす度に、チクチクと胸が苦しくなる。
こんなに愛しい命が、私の中に芽生えているのに…