恋人は隠れ既婚者【前編】
『…これ、何?』
凄く怖い目で私を見た。
指を差したところには、中絶するのに適した週数が書かれている。
「何って…産めるものなら産みたいよ。でも…産めないでしょ?」
私の言い方は決めつけたような感じがしたと思う。
彼のその冷たい瞳は、何を言いたかったのか…
どうして、そんな目をして私を見たのだろうか…
あの時の彼の目を今でもハッキリと覚えている。
そして今でもあの冷たい目の意味は、わからない。
あんなに冷たい目をした彼を見たのは、最初で最後だった。