恋人は隠れ既婚者【前編】
――静かな病室。
さっきまでの痛みが嘘のようだ。
胸の張りと痛みを感じない。
それは小さな命が、消えたお知らせ。
涙がじわりと頬を伝う。
「うぅっ…あぁぁぁ…」
気付けば、声を出して泣いていた。
拭っても、拭っても涙が溢れて枕を濡らす。
意識がもうろうとする中、吐き気が込み上げてくる。
今の自分と子供達の生活を維持する為に、小さな命を犠牲にしてしまった。
もう二度と会うことのない私の子供。