恋人は隠れ既婚者【前編】
すると…


『ゆりさん上がりです』


ボーイが私の耳元で言う。


その言葉に救われた。


やった!やっと終わりだ!

家に帰れる!

子供と眠れる!


「行かなくちゃ!ごちそうさまでした!良かったら、また…」


そう言って、お客のグラスに私のグラスを当てた。


そして今夜、何枚配ったのかわからないお店の名刺を取り出した。


名刺を渡そうとする私に、

向けられた言葉――…







『電話番号書いてない名刺ならいらないから…』


無愛想な態度で言い返された。


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