恋人は隠れ既婚者【前編】
口を尖らせて言うさが兄が、二つのテーブルを引き離しながら私を見やる。
それを見て、ちょっと悔しい気持ちになった。
でも…ここぞとばかりに閃いた言葉が、さが兄を負かせてくれそうなことに嬉しさが込み上げてくる。
「ふーん、誰に向かって口聞いてるの?《赤ジャージ》くん♪」
私は身を乗り出して、さが兄の顔を覗き込むように言った。
すると、さが兄は赤面した。
ヘヘンッ!私の勝ちだ!