恋人は隠れ既婚者【前編】
サァーッと窓が開いて、運転席に座っている彼を見た瞬間…
「…もしかして…あのうるさい黒い車?」
『う、うるさくて悪かったな!』
「いやぁ…そんな…ことないです…」
彼は目立つ車に乗っていらっしゃいました。
恐る恐るドアを開ける。
「お邪魔しま〜す。とっても目立つ車だね」
『そぉ?』
私が助手席に身体を預けると、何処に向かうのかわからないまま彼は車を走らせた。
やっぱり、緊張してくる。
サングラスをかけている彼の横顔をチラチラと見ては、心臓がバクバクと音を立てる。