恋人は隠れ既婚者【前編】
『ママ〜電話だよ〜!』
夜になって家の電話が鳴った。
子供に出てもらったが、幸恵が私に電話してきたらしい。
高熱で身体が震えながら、布団の中で受話器を握り締める。
「もしもし、幸恵?今日は休んじゃってごめんね。」
『……ひっ…博美…うっ…具合い悪いのに……ごめんね…』
いつもと様子が違う?
消え入るような声。
「幸恵、どうした?」
と聞いた瞬間――…
突然、幸恵が泣きだした。