Swallowtail 〜夜の蝶〜
飛べない
 さっきまであんなにハイだったのに、フェンスに腰かけた途端カスみたいにしぶとくへばりついていたリアルが、瞬間で私を素に戻した。

 



 たかだか八階程しかない雑居ビルじゃない。


 私は小さく舌打ちをして空を仰いだ。

 今日は久しぶりの休みだっていうのに、何が哀しくてこんなゴミと人と酒とそれをリバースした人間の嘔吐物まみれの町にいるんだろうか。         


 「死のうと思うの。」

今から一時間前に彼にそうメールしたのに、返事はない。

 いっそ、死んでほしいくらい思ったのかもしれない。

 メールの沈黙は、ことばなんかより、よっぽど相手に真実を伝えてしまう。
 彼は、私を憎んでる。
もっと憎んでほしくて、私は彼を困らせる。あの手この手で、手をかえ品を変え、苦しめる。
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