残酷天使のララバイ~The last love songs~
 

「茜ーー!」

 エンゼルの口調が改まったことなんて、今の僕には、どうでも良かった。

 声の限りに、大事なヒトの名前を呼べば。

 通信器から、戸惑った。

 だけども、聞きなれた声が響く。

『もしかして、蒼……!?』

 やっぱり。

 やっぱり茜だった……!

 僕の代わりに、命を縮める幻想人形に乗ってる……!

 通信回線が繋がったことを確認する間も惜しんで、僕はスフィンクスとヴィーナスの間に割って入ろうと、飛びこんだ。

 懐かしさと。

 命を縮めるそれに。

 茜が乗っていると言う事実に、半狂乱になりながら。

 だから、気がつかなかったんだ。

 ヴィーナスがスフィンクスに向けて、放ったミサイルの存在に。

『アホ! チビ!
 危な………!』

 なんて、悲鳴のようなクマの声と。

 エンゼルの背中に、ミサイルが着弾した衝撃が一緒だった。

『チビ……!!!』

 クマの声が響く中。

 僕のエンゼルのコックピットが火を吹いた。


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