残酷天使のララバイ~The last love songs~
 本物の『蒼・キサラギ』は、あの時、死んだ。

 そして、事故の前の、暗殺騒ぎで死にかけた僕は。

 地面に落ちたとき、真横にいた、蒼を擬態の対象に選び。

 彼から、名前と姿をもらって、今まで生きて来たんだ。

 弱い、クリスタルの肌を持つ僕達は。

 危険を感じると、身近な生き物に擬態して、とんでもなく強い肌を手に入れる。

 それは、擬態された、オリジナルの肌より強く。

 火に焼かれても擬態部分だけを焼いて、中身は残るほどだ。

 長い間僕は、蒼・キサラギになっていたから。

 オリジナルの蒼を見なくても、地球人の姿は、とれた。

 だけども記憶が戻った途端。

 一瞬『蒼・キサラギ』の姿を保てなくなった。




 ばしばしっ!



 不穏な音がして、僕の焦げた、パイロットスーツが破れた。

 そして。

 地球の鳥の羽根のような、翼が僕の背中に三対も、生える。

 顔つきなんて判らなかったけれども。

 これが、どうやら僕の本当の姿らしかった。

「蒼……!?」

 そんな僕を見て。

 叫ぶ茜に、僕は、なんとか、笑ってみせた。

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