残酷天使のララバイ~The last love songs~
ニュー・トキオ。
僕が、ジュエル・ナイツになる直前まで、住んでいた街。
……ここでは、空が、ほとんど見えない。
僕の大好きな青空は。
巨大なビルに切り取られて、晴れた日に、申し訳程度しかその姿を見せなかった。
建物ばかりが立派で、無人の、薄汚い街。
ゴミ箱目当てのカラスがギャアギャア鳴く、落書きだらけの汚い通りが。
ナトリウム・バブルで出来た無人の公園と。
大理石で出来たベンチであぐらをかき。
パソコンをいじって入るネットの世界が。
僕の知ってる世界の全部だった。
これまでは。
…………
今日もまた。
いくつかの面倒なセキュリティーをかいくぐって、某国の大統領が、愛人にあてたメールを盗み読みをしていると。
生きながら、死んでしまったような街に、似合わないほど、元気な声が響き渡った。
「蒼~~!
こんなところに居たァ~~」
パソコンの画面から、目を移すと、長い髪の美人が手を振っているのが見えた。
「……茜(あかね)」
「ねぇ、蒼~~
何で、今日もガッコをサボったのよォ!
今日こそは、一緒に行くって約束したのにィ!」