残酷天使のララバイ~The last love songs~
「大丈夫……?」

 震える僕の背に、暖かい手が置かれ……振り返れば、茜がいた。

「女の子が……男子トイレに……入って……来るなよな……」

「だって!
 ……心配なんだもんッ!」

 茜をいつまでもトイレに留めておくわけにはいかず。

 なんとか、ベンチに戻ると。

 茜が、僕を抱きしめた。

 とても良い匂いで。

 暖かく。

 やわらかい。

 茜の胸の感触が僕に当たって、僕には、別のうずきが加わった。

 自分の意志とは、関係なく。

 ……こんな時まで、まったく、もう!

 立っているのが、やっと、だって言うのに。

 茜を抱いてみたいっていう、男の本能のざわめきが。

 ……そんなに、僕は、茜のことが好き、なのか?

 ……これが「愛」っていう感情なのか?

 自分だって大変なはずなのに、僕のことを気にかけてくれる、茜のことは、キライじゃない。

 美人で。

 抱きしめたら、良い匂いのする茜のことが、キライなはずがない。

 だけども。多分、コレは。

 コレは「好き」で「愛」じゃない気がする。

 気持ちは、良くわかっていないのに、カラダばかりが先走る。





 どうなっているんだ、僕は!

 ……身も、ココロも狂って。

 僕自身の言うことなんか、ちっとも聞きやしない。
 


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