残酷天使のララバイ~The last love songs~
 自分自身を持てあまし。

 でも、茜に離れろ、とも言えず。

 クビを振る僕を、茜は誤解して、ますますぎゅっと抱きしめた。

「半年前の事故……ひどかったよねェ?
 月までの観光宇宙船だったのに……
 たくさん乗客がいたのにィ……死んじゃった。
 蒼の両親も。
 わたしの両親も……」

「……ああ」

「ほとんど無傷で生き残ったのは、わたしと、蒼と、他に何人かだけ……
 わたしは、すぐに気を失って、事故の最中は何も覚えていないケド……
 ずっと目が覚めてた蒼は、きっと。
 いろんなひどいもの……見たんだねェ?」

「……多分……ね」

 僕は、僕のココロを壊した、その原因でさえ。

 ………覚えてなんて、いないけれども。

「わたし達の船に突っ込んで来たの……エメラルド星の宇宙船だってねェ?」

「ああ」

 ……そう。

 それで、僕らは。

 物質的には、何の不自由も無く、暮らしている。







 僕らの船に『前方不注意』で飛び込んで来た小さな宇宙船は。

 エメラルド星でも高い地位にあるやつの、個人所有船だったから。



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