残酷天使のララバイ~The last love songs~
 

 僕と、その見知らぬ彼女は、腕を組んで、街を歩いてく。

 そして。

 彼女を自分の部屋に導いて。

 それから。



 ……かちゃり。



 と。

 やけに、現実めいた音を立てて、自分の家のカギをかけたとたん。

 ……僕の理性がふき飛んだ。

 ついでに、僕の意識も一気に白濁する。

 玄関に入ってすぐの廊下で、濃厚なキスをした……までは覚えているんだけど。

 さすが、夢。

 イイところなのに、それから先がちっとも見えない。

 視覚がほとんど効かない霧の中。

 眠っているような、目覚めかけで夢のきれ端を見ているような。

 奇妙な感覚の中で。

 さっきのお姉さんを抱き続ける夢を見てた。



 ささやかれる、偽物の愛の言葉。



 激しい、吐息。



 何度も貫く感覚と。



 女の、やめて!



 ……と言う悲鳴。


 そして。



 …………。


 夢。



 夢。



 ……これは、全部、夢。



 
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