残酷天使のララバイ~The last love songs~
気軽に近づいてくるかたつむりに、僕は、無意識にまた一歩下がった。
「……入り込むって……僕は、忍者じゃないし」
「……ごまかさないで?」
アリスは、下がった僕を追いかけるように。
正面から見れば二つ頭の人間っぽく見える前足と。
殻を支える、後ろ足の二組分の靴を脱いで、勝手に玄関を上がって来た。
「……あたしは、ね?
ハッキングのコト言ってるのよ?
君、地球人にしては、なかなか優秀なハッカーだって言うじゃない。
普段は、翼っていうハンドルネームで、ウロウロしてて。
いざという時には、結構ヤバいところまで簡単に入るって。
その筋では、有名人よね?」
「……」
「ね?
スカウトするから、あたし達のお仕事、手伝ってくれない……?」」
「僕は、お金に困ってないし。
アルバイトは、しない主義なんだ」
「あらぁ。
茜ちゃんは、喜んでやっているのに。
茜ちゃんの彼氏で。
おんなじ立場の君なら、きっと気にいると思うんだけどな?」
「……茜が、何をしてるって?」
僕の疑問に、アリスは笑う。