残酷天使のララバイ~The last love songs~
「……動いた」
「すげー!
チップ入ってないのに!」
「蒼!
すごい! すごい!」
ざわざわと、響く仲間たちの声を聞きわける余裕は、あった。
アリス・らぴのため息が。
ジャックの声が。
茜の歓声が、僕の操縦するスフィンクスをおし包む。
伏せのような。
頭(こうべ)を垂れた起動時の基本姿勢を正して、メインカメラを高々と上げた。
バランサーである尻尾の動きを制御しながら、一歩ずつゆっくりと巨大な幻想人形を歩かせてみせた。
よし、悪くない。
これなら、なんとかなる、かな?
そう。
思ったよりも素直に動いてくれた幻想人形に気を良くして。
仏頂面に見えるアリス・らぴに、親指を立てて、更に複雑な動作をさせようとした時だった。
ばぢっ!
僕の傍らからものすごい音がして、火花が散った。
……え?
順調だと信じていたのに。
出し抜けな異常音に、何が起きたのか、一瞬わからなかった。
僕は、キー操作を間違えては、いないはずだった……のに。
ばぢばぢばぢっという連続音に、モニターから手元に視線を移せば。
僕のPCが火を吹いていた。