残酷天使のララバイ~The last love songs~
 それよりも。

 前にやらかしたハッキングの一つでも、バレたのかもしれない。

 このまま、ぼ~~っと立っていたら。

 近所の顔見知りにでも見とがめられて、面倒くさいことになるのは目に見えていたから。

 僕は、誰にも気がつかれないうちに、茜のと、一度。

 元来た道に戻ろうとした。

 ……けれども。

「……蒼・キサラギだな!?」

 くるり。

 と振り返った背中から、声をかけられて、ぎくり、となる。

 見れば、スーツを着た、私服の警察官らしい男が、有無を言わさずすばやく僕の手を取った。

 その男の握力に。

 いててて、と顔をしかめても、男の手はゆるまずに、ますます強く握られた。

「何すんのよ!
 これじゃ、蒼の腕が折れちゃうじゃない!」

 茜がそうやって加勢してくれたけれども、警察官は厳しい顔で、堅い声を出した。

「キサラギには、逮捕令状が出ている。
 一緒に署まで来てもらおうか?」
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