蜜花 -First.ver1-
幼馴染
「おはよー…。」
ぽーっとしながら詩織が教室に入ってきた。
「おはよ、詩織。眠そうだね?」
「…うん…。」
眠そうだけど、どこか嬉しそうな詩織の表情。
恋する乙女って、可愛い。
「昨日だったんでしょ?壱夜くんが帰ってくる日。」
「…うん。」
詩織は恥ずかしそうに微笑んだ。
詩織の幼馴染である氷室壱夜くんは、小学校卒業と共に「日本の教育は合わない」と言って、アメリカへ行ってしまった。
同じ年なのに、アメリカで飛び級を使った彼は、もう大学を卒業している。
すごく頭は切れるけど…のんびりしていて(のんびりしすぎている)、どこか不思議な人。
「久しぶりに会おうかなー…あたしも。」
「!!」
私の言葉にすぐ反応する詩織。
「あたし一人じゃ、どこに行けばいいのかわからないし…詩織も来てね♪」
すぐにコクコクとうなずく詩織。
その表情は、すごく嬉しそう。
「壱夜くん、今何しているの?」
「おじいちゃんの病院で、臨床研修医やってるって♪」
「へえー…。」
壱夜くん家は代々医者だからなあ…。
壱夜くんのお父さんも医者をやっているけど、アメリカにいる。
詩織の話では、いずれ壱夜くんがおじいちゃんの病院を継ぐそうだ。
「頑張ってるね、壱夜くん。」
「うん!だからあたしも、頑張らなきゃ♪」
そう言って、微笑んだ。