蜜花 -First.ver1-

「そういえば部活、どうするの?」

お昼時間、詩織はフォークを握ったまま尋ねてきた。

帰りに壱夜くんのところに寄る予定だけど、部活に行っていたら間に合わなくなる。それを詩織は心配しているのだろう。

「休むよ。病院行くって先輩に言っておく。」

そう言ってあたしはきんぴらごぼうをつまんだ。

「いいのかな~?サボリはっけ~ん♪」

…その声は。

「閑玖!黙れ!」

ニヤニヤとしている閑玖が目の前に居た。
さっきジュース買いに行くって、教室を出たばかりなのに…!!

「病院行くフリをして、遊びに行くとは。邪道だなあ?」

千代のお弁当から勝手にから揚げをつまみながら言う閑玖。

「あーっ!!千代のから揚げ食べたーっ!!」

半泣きな千代の頭をポンポンとしながら、閑玖は続ける。

「安心しな。先輩には本当の事を僕が言ってあげよう。」

ふふん♪と鼻歌を歌う閑玖。

…これだから同じ部活は厄介なのよ。

「何が"僕"だよ!気色わ…」

「お願い!…彩帆を壱夜に会わせてあげて!」

あたしの文句を見事に遮断し、詩織が閑玖に頼み込む。

「壱夜って誰?」

真っ先に反応したのは、カレーパンを頬張る透だった。

「私の幼馴染なの!…ずっとアメリカに行ってて…昨日帰ってきたの。」

「…まあ、いっか。」

え?

閑玖がふっと口を開いた。

「行ってくれば?どーせ、詩織のためなんだろ?」

そう言って意地悪な閑玖はほほえんだ。
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