蜜花 -First.ver1-
―…放課後。
予想外の掃除当番に、あたし達は焦っていた。
今すぐ学校を出ないと、バスに間に合わない!!
「どうしよ詩織っ!先輩に言う暇が無いよお~!!」
「メールで伝えたら!?」
「先輩滅多に学校で携帯開かないもんー!!」
どうしよどうしよ。
無断欠席はマズい!!
「俺が言っておくよ。」
…へ?
部活の道具を抱え込む閑玖が言った。
「成美先輩だろ?伝えておくよ。」
そう言って閑玖は教室を出て行った。
そんな閑玖を見届けて、あたしと詩織はポカーン…。
「珍しい日もあるんだね…。」
「うん…。」
そう言ってみたものの、あたしにとっては珍しくは無い。
詩織は知らないだろうけど、あいつにだって良いところは沢山ある。
…普段の意地悪とは全然想像がつかないけれど。
犬猿の仲をやってくると、それと同時に見えてくる良いところ。
そんな部分には、あたしもどうしていいのかわからないほど、胸がきゅっとなる。
「…あぁぁ!彩帆時間っ!!」
詩織が悲鳴をあげる。
「じゃあ…走るよっ!!」
そう言ってあたしたちは勢いよく教室を飛び出した。