蜜花 -First.ver1-
「壱夜くん、久しぶり。…わかる?」
久しぶりに会うから、なんだか緊張するけど…。
「あぁ、彩帆ちゃんかな?久しぶり。」
わかった様子で、にっこりと微笑んだ。
目がきゅっと細くなって、愛らしい。
「…にしても…。」
壱夜くんに会ったのは嬉しい。だけど壱夜くんの周りに散乱している、この大量の本は一体…。
あたしの視線に気付いたのか、
「あぁ、この本かな?ここ暇だからさー…。持ち込み禁止って書いてないし、家から持ってきたんだ。」
そう解説するけど。
…量が半端ない。
とまあそれはさておき。
細いフチの眼鏡をキランとさせて微笑む姿は、いかにもモテる白衣の王子って感じがする。
ストレートな長髪をサラリと流しているし、柔らかい容姿から、怖そうなイメージは全く無い。
…絶対モテるな。
「ねえ壱夜。今日は何時まで?」
「んーと…9時までかな?」
「そっか…。」
さすがにその時間帯まで居られないとわかり、詩織は少ししょぼんとする。
「ギリギリまで居なよ。」
な?と詩織の頭をポンとする。
「…うん!!」
そう言って詩織は笑った。
「微笑ましいなあ…。」
そう呟いて、あたしもこっそり笑った。