蜜花 -First.ver1-

「あたし、ちょっとジュース買ってくる!」

そう言ってあたしは薬局を出た。
…ちょっとは気を利かせたつもり。

病院の中は相変わらず大きくて、まるで迷路みたい。

「自動販売機はどこだあー…?」

独り言を呟きながら、あたしは廊下をテクテクと歩く。

「あ!」

廊下を歩いていると、ガラス張りの壁の向こうに中央に噴水を発見した。
どうやら休息の場らしい。

あたしは早速噴水のところへ向かった。

「…すごーい!!」

噴水を囲むベンチには、すでにたくさんの患者さんが座っていて、誰もが自分の時間を楽しそうに過ごしていた。

あたしはベンチに腰掛け、噴水を眺めていた。

「きれいだなー…。」

一定に噴出す噴水は、水のオブジェのように存在していた。

「…お一人かい?」

隣に座っていたおばあさんが、あたしに話しかけてきた。

「いいえ、友達と来たんです。」

「お見舞いかい?」

「知り合いがここで働いているって聞いたもので。」

「そうなのかい。それはそれは…。」

そう言っておばあさんは微笑んだ。
何年にも渡って刻まれたしわが、独特の優しい雰囲気を作り出す。

すごく素敵なおばあさんだった。

「あたし、そろそろ行きます!」

そう言ってあたしは、ベンチから立ち上がった。

「また、会えるといいねぇ。」

「はい!また、ぜひ!」

あたしはそう言っておばあさんに微笑んだ。



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