蜜花 -First.ver1-

初めて斎条くんと会ったのに、あたし達の会話は弾む一方で。
時折見せる彼の悲しげな表情が何より、心に留まった。

「あれ…そういえばさ、名前何?」

…あぁ!
あたしは名乗ってもいなかった。

「彩帆っ!…丹野彩帆です。」

「彩帆ちゃんね。…面倒だし、彩帆でいい?」

彩帆…。

何か距離が近くなった感覚。
まあ、呼び捨てにそんな深い意味なんて無いよね?

…思えば閑玖も"彩帆"だし。
もっとも"おまえ"の方が多い気がするけど。

…っていうか皆"彩帆"か。

「いいよ!」

あたしはそう返した。

「了解、じゃあ俺は一眠りするから…、襲うなよ?」

「襲いません!」

からかう君に、楽しそうなあたし。
周りから見たら、どんな風に見えるかな…?

「ね、斎条くん…?」

見れば斎条くんは、あたしのハンカチを枕にしている。

…あたしだって寝たいのに。

そう思って声をかけた瞬間―…

ガバッと起き上がった斎条くんはそのまま…



―…ちゅっ。
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