蜜花 -First.ver1-
「!?!?!?」
何何なにい!?
「俺のことは"雄貴"って呼んで?"斎条くん"って呼んだら罰ゲームね♪」
ニヒっと笑う斎条くんに、涙目のあたし。
何よそれ。
人の気も知らないで…。
気づけば潤んだ瞳は限界寸前。
「ぅうえ~…。」
限界を超えて溢れた涙は、止まることを知らなかった。
「えぇぇ!?」
突然泣き出すあたしに、あたふたしている斎条くん…じゃなく雄貴。
「何で泣くの!?」
そりゃ泣くよ!?
初対面だし、イキナリだし。
それに…
「は、初めてだったのにぃ~…!」
「えぇぇ!?!?」
う、奪われたーっ!!!!!
「彼氏…いるよね?」
「ほっぺ止まりだもん…。」
まだグスグス言っているあたしに「あちゃー…」と頭を抱えている雄貴。
こっちが頭を抱えたいよ!
あたしは透のイキナリの告白におっけいをしたわけで、心から好きとは思わなかった。
だから透は"本当に好きになったら唇にしてね?"と、いつもホッペに温もりをくれた。
その位あたしのことを大切にしてくれていたのに。
…のに!!
透のために準備しておいたファーストキスは、呆気なく雄貴に奪われてしまった。
「…カツク。」
「え?」
「ムカツクっ!ファースト返せこの変態!!」
「落ち着けって!!」
ボカスカ叩くあたしに、雄貴は困ったような、嬉しそうな表情をしていた。