蜜花 -First.ver1-

「…つ、疲れた…。」

「彩帆は暴れすぎだ。」

「雄貴は常識無さすぎ。」

「…ハイ。」

あたしの言葉にシュンとする雄貴。

…勝った。

小さくガッツポーズしていると

「…でもファーストご馳走様♪」

なんてニヒっと笑っているものだから。
あたしは返す言葉も無く、ただ黙ってしまった。

「あれ?…彩帆顔真っ赤だよ?」

わざとらしく言う雄貴。

「…ふん。」

ちょっと拗ねてみるあたし。

「!?」

急に頭を摑まれたと思うと、そのままわしゃわしゃと頭を撫でられた。

「彩帆可愛い♪」

「…うるっさい!」

でもその時あたしは思わず見とれてしまった。

普段は大人びているこの人が、小さい子供のようにくしゃっと笑うのを。

それは何だか別人のようで、あたしは一瞬にして目を奪われてしまった。


だから、この時は疑いもしなかったんだ。
時折見せたあの悲しげな表情の意味を。
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