蜜花 -First.ver1-
「何の話~?」
透が教室に入ってきた。
…後ろには閑玖がいる。
「壱夜くんの話だよ♪」
千代が楽しそうに話す。
その言葉に反応してか、閑玖が急に千代に後ろから抱きついてきた。
「ど、ど、どうしたの閑玖!?」
千代は真っ赤になってもがいているが、振りほどけなさそう。
「だって男の話してるし…。」
閑玖には珍しく、うだうだ言っている。
「大丈夫だって閑玖!私幼馴染の話だし。」
「ふーん…。」
それでもなお閑玖は千代から離れない。
「…閑玖?千代は閑玖だけだよ?」
「ん…。」
でも一方に離れる気配は無い。
あたしは何だかモヤモヤしてきた。
だってこんなの、閑玖らしくない。
閑玖は絶対に人前でラブラブなんかしないし、彼女に甘えたりもしない。
クールなとこがまた格好いいんだって、千代が話していたのを覚えている。
…閑玖、どうしちゃったの?
昨日もいきなり透を殴るし…。
怒って帰っちゃうし。
意地悪で冷徹な閑玖が、ここまでストレートに感情を出したことがあっただろうか?
…そりゃ閑玖だって人間だし。
この位のこと、って流しておけばいい。
でもやっぱり閑玖は変だ。