蜜花 -First.ver1-

「何の話~?」

透が教室に入ってきた。
…後ろには閑玖がいる。

「壱夜くんの話だよ♪」

千代が楽しそうに話す。
その言葉に反応してか、閑玖が急に千代に後ろから抱きついてきた。

「ど、ど、どうしたの閑玖!?」

千代は真っ赤になってもがいているが、振りほどけなさそう。

「だって男の話してるし…。」

閑玖には珍しく、うだうだ言っている。

「大丈夫だって閑玖!私幼馴染の話だし。」

「ふーん…。」

それでもなお閑玖は千代から離れない。

「…閑玖?千代は閑玖だけだよ?」

「ん…。」

でも一方に離れる気配は無い。

あたしは何だかモヤモヤしてきた。
だってこんなの、閑玖らしくない。
閑玖は絶対に人前でラブラブなんかしないし、彼女に甘えたりもしない。
クールなとこがまた格好いいんだって、千代が話していたのを覚えている。

…閑玖、どうしちゃったの?

昨日もいきなり透を殴るし…。
怒って帰っちゃうし。

意地悪で冷徹な閑玖が、ここまでストレートに感情を出したことがあっただろうか?

…そりゃ閑玖だって人間だし。
この位のこと、って流しておけばいい。

でもやっぱり閑玖は変だ。
< 47 / 78 >

この作品をシェア

pagetop