蜜花 -First.ver1-

どの位経っただろう。

あたしの涙もようやく乾き始めた頃、あたしはボーっと景色を見ていた。

そんな時。

―ボスっ!

「痛っ!」

誰かがあたしのお尻を蹴った。
おかげで前のめりになって、フェンスから落ちそうになった。

「危ないじゃないっ!落ちたらどうすん…」

「よっ♪」

振り返るとそこには、雄貴が立っていた。

「な…んで?」

「サボリ~…って、お前顔やばいよ!?」

「うっさいほっとけ!」

でも雄貴の顔を見たら、安心感が込み上げてきた。

「…彩帆!?どうした…」

雄貴が口を開く前に、あたしはまた泣き崩れた。

「ばかあ~…雄貴ばかあ~…。」

「………俺っ!?」

雄貴はあたふたしているけれど、緊張が解けたあたしは涙が止まらない。

でも次の瞬間。



―え…?



一瞬びっくりしたが、あたしは涙で視界がわからない。


けれどもこの温もりは…


確かに雄貴の胸の中にいた。
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