蜜花 -First.ver1-
―…
あれは、去年の学校祭のこと。
私のクラスでは、喫茶店をやっていて、かなりの繁盛だった。
売るものも無くなり、店終いをしていると、一人のお客が店に入ってきた。
一瞬にして教室がざわめく。
「すみません…、もう店は終わったんです。」
クラスの誰かがお客にそう告げた。
そしてお客が帰るかと思われた瞬間―…
「丹野彩帆さん…だよね!?」
お客は確かに私の名を呼んだ。
…なんで?
「はいー…?」
返事をしてお客のところへ行くが、私とこの人は接点が無い。
そして、周りの視線が痛い。
「何ですか?」
おそるおそるな私に、お客はこう言った。
「俺と―…付き合って!」
…はい?
…えぇっ!?
はああああああああああぁっ!?
「なっ!? 何っ!?」
「君さ、よくサッカーの試合見に来てくれてたよね?俺…前から気になってて…。」
「…そんな…私、あなたのこと知らないし…付き合ってって言われても困ります。」
そんな私の言葉に反応する女子が数名。
おー怖い怖い。
「じゃあ、これから知ってよ♪」
ね?という陽だまりの様な笑顔…そんな笑顔に、この人なら好きになれるかなと思った。