うさぴょん号発進せよ
第2章 解印

第1節 戦場での出会い

コウヅキの知る限り、タスクという人物は情に厚い男である。

タスクとミレイユは、血の繋がりがなかった。

知り合ったのは、とある惑星の戦場と化したドームの中。

逃げ遅れた民間人の母親らしき女性が、守るようにまだ幼いミレイユを抱いていた。

母親は建物の下敷きになり、虫の息だった。

ミレイユを最初に発見したのは、当時少年兵として敵地に送り込まれていた、コウヅキだった。

軍からは「敵は全て殺せ」という命令を受けていたため、躊躇なく二人に銃を向けた。

だがそれを制止したのが、同じ部隊に所属していたタスクだったのである。

タスクは普段から、傭兵としても変わり者だった。

向かってくる敵の兵士のことは容赦なく殺すくせに、戦意喪失者に対してだけは、決して銃を向けることがない。

一度、敵に殺されかけたコウヅキを、庇ったこともあった。

戦場では、己の身を守れるのは自分だけである。

それができぬ者は死、あるのみだ。

コウヅキ自身も死ぬことには、全く恐怖を感じていなかった。

毎日、大量の殺戮を目の当たりにしていても、何の感情も湧いてこない。

そのようなものは、とうに捨てていたのだ。感覚もそれに慣れ、麻痺していった。
< 118 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop