うさぴょん号発進せよ
「ああ、そうだ。お前、今から何処かに出掛けるのか?」

「いや。船長に呼ばれたから、これからそこへ行くだけだ」

「もしかして、別の仕事でか?」

「俺もまだ、船長からは詳しい話を聞いてないんだが…多分、そうだろうな」

「そう、か。…ああ、すまんな。通り道を邪魔しちまって」

そう言いながら、タスクは慌ててドアの前から退く。

タスクが動くと同時に、リンッという澄んだ音色が響いた。

それはタスクが腰にぶら下げていた、マスコット付きのキーホルダーから聞こえてくる。

小さな鈴も2つ付いており、音はそこから鳴っていた。

数年前にミレイユから、誕生日プレゼントで貰ったものだった。

タスクはそれを肌身離さず、いつも大切に持っていた。

「コウヅキ…、いや。…じゃあ、俺はこれから部屋に戻るから」

「?そう、なのか」

何か曖昧な態度に、コウヅキは一瞬、違和感のようなものを感じた。

しかしタスクがそのまま背を向けて、自室に歩みを進めたので、コウヅキもまた、反対方向へ歩き始める。

「ミレイユのこと、頼むな」

ポツリと呟いたその言葉にコウヅキが振り向くと、そこにはもう、タスクの姿はなかった。
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