うさぴょん号発進せよ
「だって、これはお父さんが決めたことだもん。
あたしお父さんのこと、信じているから」

本当は父親が居なくなり、寂しいはずである。

なのにいつも笑顔を絶やさず、常に明るく振る舞っていた。

トヲルはその笑顔に、何度も救われた。

「あのね、お父さんとお兄ちゃんとあたし、本当の家族じゃないんだ」

目の前の金網に向かって話し掛けるように、ミレイユは静かに言った。

コウヅキのフルネームは、『コウヅキ・シリウス』。

ミレイユは、『ミレイユ・ミルフィ』である。

この二人は名前が違うので、本当の兄妹ではないのだろうと薄々気付いてはいたのだが。

しかし父親とも血が繋がっていないというのは、知らなかった。

「お父さんの借金って、あたしのせいなの」

カシャン…と、手に触れていた金網が小さく鳴る。
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