うさぴょん号発進せよ
(そうだ。もしかして)

トヲルは絨毯を見つめながら、急に思いつく。

(この人、嘘を付いてるんじゃ?)

顔を上げ、まだ話し込んでいるコウヅキの後ろ姿を見た。

両親は、自分には旅行に行くと言って出て行った。当然自分はそれを信じたい。

なにより、この男の言葉の方が信用できなかった。

ゴードン商会の社員なのに、かなりラフな格好だし、自分を殴った乱暴者だし、胡散臭い感じもするし。

そもそも、なぜゴードン商会が借金の取り立てに来るのか。

普通は消費者金融の会社ではないのか。

確かゴードングループにも、消費者金融はあったはずだが、それならばそう名乗るはず。

それなのに何故、商会の方を名乗るのか。

男の真意を確かめようと、目をこらして、ただじっと見つめてみる。が結局、後ろ姿を見ただけでは、何も解決するはずはなかった。

少し息を吐き、トヲルが諦めて目線を逸らしたとき、

「んじゃ、行くぜ」

通信が終わったらしきコウヅキが、トヲルに声をかけた。

「はあ…」

目線を逸らしたままで、気のない返事をする。

「な〜に他人事な顔してんだよ。ほら、あんたも行くんだぜ」

「…は…、え。…えええええええええ???」

また適当に相槌を打とうとしたのだが、途中でその意味を悟り、トヲルは改めて驚いたのだった。
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