うさぴょん号発進せよ
再び画面は変わる。

「居場所の見当はついた。しかし…」

男は言おうか言うまいか悩んだ。

もしかするとそこには、自分の職場が関係しているのかもしれない。

これは調べている過程で分かったことである。

しかし確証はない。

「本当に?そこに兄さんが…」

アキナはテーブル越しに身を乗り出してきた。

「いや、それはまだ分からない」

しかし男は、あっさりと否定する。そして難しい顔をしながら腕を組んで、座っている椅子に深く寄り掛かった。

「どういうことです?」

アキナの代わりにハルヒトが聞いてくる。

確証はない。

だから。

「俺は、そこへ行ってみようと思う」

確かめようと思った。

その場所で自分が調べたことが実際に行われているとは、考えたくはない。

だがアキナ達の元へ大金が送られてきたのも、事実である。

『これを借金の返済に充ててくれ』という、兄からのメッセージと共に。

そして失踪。

男の調査結果と照合してみると、そこにアキナの兄がいる可能性は十分にあったのだが。

それよりも気になることがあった。
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