うさぴょん号発進せよ
「腕輪の通信機能が使えないってことは、翻訳機能も使えないってことね」

いつからそこにいたのか。階段の側でヴェイトが腕を組んだ姿勢で、手摺りに凭れて立っていた。

「どういうことだ?」

腕輪(リング)には通信機能の他に、翻訳機能も備わっている。本来言語の通じない他種族とのコミュニケーションには、それを介して行っているのだ。

「ほら、お姉ちゃん起きて」

ヴェイトは倒れているセリシアに近付くと、軽く肩を揺さぶった。

程なくして「…ん」という息の漏れるような声と共に、ゆっくりと目が開かれた。

起きたばかりでまだぼうっとしているセリシアに、ヴェイトは傍らに落ちていた眼鏡を渡すと、代わりにマシンを操作する。

(セリシアってよく見たらヴェイトと双子なだけあって、けっこう美人だな。きっとヴェイトみたいな格好をすれば、かなり綺麗になるんだろうな)

眼鏡を外しているセリシアを見ながら、トヲルは何となくそう思った。
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