うさぴょん号発進せよ
「オヤジ?」

「あの娘は化け物だ。黒い炎に掴まる前に、早く逃げるんだ」

「おい、どういうことだよ。それにあの娘は、一体なんなんだよ」

タスクの言っている意味が、コウヅキには分からなかった。

「とにかく今は時間がない。この部屋にある制御装置は、まだ生きている。そいつで下りている隔壁を操作すれば、ここから出られるはずだ」

コウヅキの質問には答えずに、タスクは中央付近に浮かんでいるモニターの方を指差した。

「だから、早く…」言いかけ、タスクはまた噎せ返り吐血する。

「オヤジっ!」

「俺のことは構うな。ミレイユを連れて、早く行け!」

「お父さん、そんなのやだよ。出来ないよ!」

ミレイユが必死になって、タスクに縋り付く。

「それにこの空間は、直に消滅するんだ。こんな場所にオヤジ一人を、置いていけるわけねぇだろ!?」

《もう、遅いかもしれぬな》

ペルギウスの低い声と同時に、この部屋に最初に入ったときよりも、更に強烈な異臭がしてきた。

トヲルはそこでようやく我に返り、振り向いた。
< 281 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop