うさぴょん号発進せよ

第4節 変貌

「あいつ!ほんっとうに、なんてドアホなんだ!!」

コウヅキの右腕は、出血がまだ続いていた。その上、感覚も徐々に失われていくようだった。

しかしそれに堪えながら、未だに意識を失ったままでぐったりとしているミレイユを抱え上げ、急いでエレベーターへと乗り込んでいた。

意識を失っている人間を移動させるのは、例え怪我をしていなかったとしても大変なことではあったが、今はそんなことを言っていられる状況ではない。

「人の言うことを聞かねぇで…クソが!」

コウヅキは奥歯を噛み締めながら、吐き捨てるように呟いた。

トヲルの考えそうなことなど、容易に想像できる。自分を犠牲にして、コウヅキ達を助けようという考えなのだろう。

死体達はどんなに倒しても起き上がり、向かってくる。殴っても蹴っても、全く手応えがない。

動きが単調だったために避けるのは容易かったが、あのまま戦い続けていた場合、消耗の激しいこちらの分が悪いのは目に見えていた。

アイという少女の顔を見れば、明らかにあの銃に興味を持っている様子だった。あれをこの集団の中に投げ込めば、僅かでも少女の気を逸らすことはできたはずだ。

現に今トヲルは、既に死体達に囲まれてしまっている。

それなのに自ら銃を持ち、しかも出入り口が1ヶ所しかない場所へ逃げ込もうとするとは。
< 300 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop