うさぴょん号発進せよ
顔を俯かせていたために、コウヅキの場所からでは表情を見ることはできない。

しかし纏う衣のように周囲に電火を走らせ、亡者のようにその場に佇んでいるように見えていた。

トヲルの周りで蠢いていた死体の一つが、その身体に触れる。

瞬間、トヲルからは強い閃光が放たれ、大きなスパーク音とともに火花を散らせた。

その火花が触れた死体に燃え移ると、肉の焼けるような臭いとともに、あっという間にその屍を灰にしたのだ。

コウヅキは自分の目を疑った。

それは死体とはいえ、元は『ヒト』である。

先程の死体は、どう見ても人間の男性だった。

成人男性を焼死させるのに一体どれほどの時間が掛かるのかは、コウヅキにもよく分からない。だが少なくともあのような短時間で、しかも骨さえも残さずに灰にするような行為など不可能だ。

しかしそれが現実に、目の前で行われているのである。

コウヅキは他も気になり、周りをよく見渡してみた。
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