うさぴょん号発進せよ
突然強い突風が吹き上げ、コウヅキはミレイユを庇いながら、思わず顔を背けた。

突風が収まるのと同時に、目の前に何者かの気配を感じ、顔を上げる。

「やはり『地の者』の肉体ではない故、力の制御がやや困難なようじゃな」

トヲルがこちらを向き、右手で腹を押さえ、左手は顎をさすりながら、何やらぶつぶつと独り言を言っている姿が目に入った。

いつのまに現れたのだろうか。コウヅキには、その気配を感じることができなかった。

(トヲル、なのか?…いや)

確かにトヲルだった。

しかしコウヅキにはソレが、トヲルであってトヲルではないと確信していた。

いつものトヲルの、あの柔和な目付きではない。そこにいる者は眼光鋭く、隙がなかった。

声も確かにトヲルのものだった。が、いつもの柔らかい口調ではなく、落ち着きのある、しっかりとした話し方をしていた。なにより、言葉遣いが全く違う。
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