うさぴょん号発進せよ
コウヅキは目の前のトヲルの姿をしている何者かを警戒し、身構えた。

「じゃが、確実に力は戻っておるようじゃ。居心地は悪くないぞよ」

しかしソレは、コウヅキのことなど全く眼中にないといった様子で突然背を向けると、満足げに独り言を言いながら前に向かって、ゆっくりと進んでいったのである。

その先の地面には、大穴が開いていた。

少し離れた場所にいるコウヅキからでも、大きくて深そうな穴だと分かった。もしかしたらその奥には、先程自分達がいた地下にでも繋がっているのだろうか。

トヲルは何の躊躇いもなく、真っ直ぐにそちらへ向かって歩みを進めていった。

そして落ちる寸前で、消えた。

落ちたのではない。確かに消えたのである。

コウヅキは呆気に取られながら、暫くその場に佇んでいた。
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