うさぴょん号発進せよ
トヲルの願いでもあり、コウヅキとミレイユは安全な場所に移動させることができた。

『宿主の希望は必ず尊重する』というのが、ペルギウスのモットーでもある。

地下に渦巻く黒い気は、この空間全体を覆い尽くしながら暴れている。

しかし少女はこちらには、全くといっていいほど敵意を向けてこなかった。というよりペルギウスの存在など、気付いてさえいない様子である。

この空間内の気には殺気の他に、『驚き』と『戸惑い』といった感情も交じっているように思われた。

これらの状況から判断するに、恐らく少女は自らの力を制御できないのだろう、とペルギウスは考えている。或いは、その術を知らないだけか。

何れにせよこの状況は、ペルギウスにとっては好都合だった。

例え少女がペルギウスと敵対する「闇の者」だったとしても、元々ペルギウスには戦う理由がない。

両者間での争いは、「地の者」の『強い肉体』を巡ってのものである。そして今ペルギウスは、地の者でないとはいえ、新たな肉体を手に入れているのだ。

つまりこのまま少女を放置していても、なんの問題もなかったのである。

だがペルギウスは、この場に戻ってきていた。自身で少し、確かめたいことがあったからだ。
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