うさぴょん号発進せよ
「む?」

大きなガラスの破片が、目の前に飛び込んできた。咄嗟にペルギウスは首を動かしてそれを避けたが、頬を少し切ってしまう。

《我もまだ、この身体に慣れてはおらぬからな》

その間にも、相変わらず黒い気は少女にまとわりつくように、激しく渦を巻いていた。その中には巻き込まれた瓦礫、ガラスの破片なども一緒に流れている。

ペルギウスの瞬間移動能力でも、近付くのは難しかった。今は離れた場所から自分の周りに結界を張り、辛うじて避けてはいるが、側に近付いたときに全てを避けられるとは思えない。

恐らくこの黒い気は、少女の感情――怒り、憎しみのようなものが暴走したのだろう。

こういった感情的な力の暴走というものは、いずれ持久力が落ち、失速するものである。

ペルギウスは、そのチャンスを待っていた。
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