うさぴょん号発進せよ
《主はあの状況下では、少なくとも「闇の者」の炎に焼かれる運命のみで、選択の余地が全くなかった。
それを打開するためには我が主に「寄生」し、我の能力を使用すれば或いは防げるかもしれぬ。そして更に我と主、双方とも助命できるかもしれぬ。
その上で我が主に「寄生」するためには、主が意識喪失間でないと不可能じゃ、ということもあの者達には伝えてあった。
結果、咄嗟にあのような行為に及んだのであろうな》

「そんな、無茶苦茶な」

確かにあのままだったなら、トヲルもタスクと同じ運命を辿っていたに違いなかった。周りを死体達に囲まれ、逃げ道がなかったのも確かである。

しかしあの少女の攻撃を回避するためとはいえ、自分の息子の腹に穴を開けるとは、いくらなんでも無謀すぎる。一歩間違えば死んでいたかもしれない。

《じゃが現に、急所は外れておったぞ。内蔵もさほど損傷なく、出血も少なかった。
我も驚いたのじゃ。人間のほうが「地の者」よりも遥かに治癒力が高かったのでな》

トヲルは、ふと思い出した。
< 321 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop