うさぴょん号発進せよ
第1章 仕事

第1節 来訪者

「はぁぁぁ…」

シャトルから降り立ったトヲルは、辺りにヒトが誰もいないのを目視で確認した後、周囲に聞こえるくらいの大きな、かなり深い溜息を一つ吐いた。

徐に左手首にしている腕輪(リング)の一部分を、右手人差し指で軽く触れる。

同時に腕輪上面の何もない空間から、薄緑色の淡い光を放つホログラムが浮き出てくる。

「あー、6時7分。もうこんな時間かぁ」

モニター画面に表示された数字を見ながら、また深々と溜息を吐き、独りごちる。

ステーションを出たトヲルは、もう一度腕輪に触れてモニターのスイッチを切ると、大きめのショルダーバッグを改めて肩にかけ直し、重い足取りで自宅へ向かった。

駅前はこの町(ドーム)の中心市街地なのだが、早朝ということもあり、商店街は殆ど人影がなく閑散としていた。

自動(オート)清掃ロボ、通称『ソウ太くん』が、目の前を数台行き交い、時折落ちているゴミを拾っているくらいである。

ここ、ジャパトウ・シティのあるドーム内一帯は、もう空が白み始めていた。
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