うさぴょん号発進せよ
ゼミ仲間である友人の一人に、珍しく「飲み」に誘われたのである。

実を言うと、チューハイを少ししか飲めないので、本当はあまり気が進まなかった。

それに卒業論文用の資料整理作業も残っていた。

とはいえ、自宅に帰っても両親は2週間前から旅行に出掛けていて留守だったし、たまには気晴らしも必要な気がしていたので、軽い気持ちで誘いに乗ることにしたのだった。

その結果、居酒屋でその友人に、延々と失恋愚痴話を聞かされる羽目になった。

その後更に友人は、夜中3時過ぎまで一人、カラオケボックスで泣きながら歌っていた。

4時頃になると、店の中で泥酔状態になり、マイクを握ったままで爆睡してしまった。が、生来断れない性格のトヲルは、結局独り、素面(しらふ)のまま最後まで付き合ったのである。

それに友人一人を、店にそのまま放置しておけなかったので、無理矢理叩き起こして自宅に送り届ける…という快挙までやってのけたのだ。勿論カラオケボックス料も、ちゃんとトヲルが支払ったのである。

それでやっと帰宅できたのがこの時間、という訳だった。

幸いにも友人宅は大学周辺にあったので、思ったよりも苦労はしなかったのだが。

とはいえトヲル自身、肉体的にも精神的にもかなり疲れていた。

家の玄関を入ってすぐの、居間にあるソファーに即傾れ込んで、泥のように眠りに入ったのは言うまでもない。
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