うさぴょん号発進せよ
「コウヅキ、おかえり〜♪」

彼女はこちらに気付くと、駆け寄ってきた。

両腕を広げ、コウヅキに抱きつこうとした瞬間、

メコッ。

鈍い音を立てて、コウヅキの拳が彼女の顔面へ確実に入った。

そのままコウヅキは何事もなかったかのように、無言で先へと歩いていく。

彼女が後ろで何事かを喚いていたが完全無視、だった。

トヲルは呆気にとられて見ていたが、

「い、いいの?あの女の人…あのままで?」

後ろを振り返りながら、コウヅキに聞く。

「問題ない」

そう一言だけ言うと、突き当たりの更に狭い階段を上りながら、コウヅキは続けて言った。

「それにあいつ、一応あんな姿(なり)はしているが、俺は『男』と抱き合う趣味なんか、ないからな」

(『男』って…。まさか僕、また騙された!?)

トヲルは先程の子供のことといい、今のことといい、自分のヒトを見る目のなさに、かなり落ち込んだのだった。
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