うさぴょん号発進せよ
トヲルと同じ東洋系の血筋なのだろうか。

無造作に、幾らか長めに刈られた漆黒の髪。瞳も同じ色だが、三白眼なのか目付きは悪い。紫ラメ入りの派手な柄のシャツを着崩し、ボロボロの色あせたジーンズを穿いている。

そしてポケットに、両手を突っ込みながらくわえ煙草で、上からその目付きの悪い眼で、トヲルを睨み付けていた。

「あんたがトヲル・藤崎、だな」

男は目線を外さずに、そのまま投げ捨てた煙草を右足で乱暴に消すと、唸るように低い声で問う。

トヲルは自分より、背の高いその男を見上げ、反射的に「しまったっ!」と思った。

普段なら、玄関に設置してある監視用モニターで、確認してからドアを開けるのだが、今日は半分寝惚けていたということもあり、確認をせずに開けてしまったのだ。

そのまま無言で、ドアを閉めようとするトヲル。

しかし男の足が、ドアの隙間に滑り込む方が、一瞬早かった。
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