ひとひらの記憶
それから、またお母さんと悠さんに私の記憶があった頃の話を聞いた。

自分の話なのに覚えてないなんて変な感じ―――。
でもやっぱり、どこか懐かしい。




桜が舞い散る春の暖かい一日。
私は悠さんとデート。

ショッピングに行って、洋服とか見たりプリを撮ったり。デパートで遊んだ後私達は公園に行った。

とても広くて何もない芝生が広がる、とてつもなく広大な公園。
そんな公園で、私は少し遠くにいた悠さんを大声で呼ぶ。悠さんは、微笑みながら小走りで私のところへ。
私ははしゃぎながら悠さんに言う。


「どっちが早いか競争!! あの噴水に先に着いたほうが勝ちね」


私はそういいながら走り出した。
悠さんが慌てて追いかける。
私の病気を知ってたし、私をすごく大切にしてくれていたから。
私の腕を掴んで


「走ったら心臓に悪いだろ!! もしそれで悪化したらどうするんだ!?」


って叱った。
私は、ぶつくさと文句を言いながらも、素直に従ったらしい。




悠さんが話してくれた、私と悠さんとのデートの思い出。
お母さんも知らなかったらしくて、驚いて「まあ、そんなことしてたの沙良ったら」と、苦笑していた。
残念ながら私は覚えていないけれど、私の大切な思い出―――。




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