ひとひらの記憶
そして、あっという間にいう間は過ぎて、悠さんが帰る時間になった。
外はもう真っ暗だ。


「ごめんなさいね。こんなに遅くまで」


お母さんは悠さんに謝った。
悠さんはにっこり笑う。


「いえ。俺が居たくてここに居たんです」


その言葉がとても嬉しかった。
私からも、悠さんに心をこめてお礼を言う。


「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」


そう言って私がにこりと笑うと、悠さんの顔が急激に赤くなる。


「え……えっと、その。また来ます!!」


悠さんは慌ててそう言うとくるりと背を向け、足早に去っていってしまった。


「私……何かしちゃったかな?」


心配になってお母さんに問うと、意味ありげな顔で、


「んー……沙良も罪な女ねぇ」


と、意味ありげに呟かれた。
私はただ、首を傾げるだけだった。
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