ひとひらの記憶
そして次の日。
部屋の扉をコンコンとノックする音で目が覚めた。
「はい、どうぞ」
私は上半身を起こし、返事をした。
「失礼します」
といって入ってきたのは、私の知らない人。
私の担当になっている医師の顔はもちろん、看護師の人たちの名前も顔も昨日一日で覚えたし、お父さん、お母さんの顔も覚えた。……それに悠さんの顔も。
入ってきた3人の女の子達は、今の記憶を失ってしまった私には知らない人だった。
「ヤッホーッ♪」
「お見舞い来たよ、沙良」
「沙良にとっては、私達ははじめまして……かな」
3人は口々に言うと、ベットの側にある椅子に腰を下ろした。
それぞれ自己紹介をしてくれる。
3人の中で一番活発そうな2つ縛りの小柄で可愛い印象の子が小柳美波。
お姉さんタイプの、美人さんが神田朱里。
そして、委員長が似合いそうな眼鏡っ仔、鈴宮未帆。
彼女達が私の親友であった。
昨日の悠さんやお母さんのように、私の話をしてくれた。
私の話を聞くのは、ちょっとくすぐったいけど、すごく嬉しい。
私は、3人の話がいったん途切れると、
「また、話してくれる?」
と、訊いた。
3人はにっこり笑って、「当たり前じゃん!!」と答えてくれた。
そしてそれから小一時間ほど話し込み、3人は「また来るね」といって、帰っていった。