ひとひらの記憶
そして今日が、手術当日。


両親や、医師の前では強がってみるものの、正直怖かった。
失敗したらどうしよう。
そんな不安が、ずっと心の中に広がっていた。


もし、この手術が失敗したら、私、死ぬのかな。


そう思うと、手術を受けるのが、嫌だと思った。
怖いと思った。

それでも、私を支えてくれる人がいたから、頑張ろうと思えた。



手術直前。


「頑張れよ、沙良。きっと大丈夫、成功だって。なんてったって、俺が付いてるんだからな」


私の名前は皆藤沙良。

そして、今、私を励ましてくれたのが、私の彼氏、
夏目悠。

悠の言葉は、いつも私に勇気をくれる。


「うん、頑張るよ。そうしたら悠、沙良の事、褒めてくれる?」

「おう。頑張ったら、キスしてやるよ」


悠は笑ってそう答えた。


「え~。それはいらない」


私は、そう言った。
もちろん、冗談。

欲しいに決まってる。


「何だと、コノヤロー。どーして俺のキスいらないんだよ!?」


悠は、そう答えた。
さっきのは、冗談と気づいている。


でも、私には、キスよりも先にして欲しいことがあった。キスは、二番目。

< 2 / 23 >

この作品をシェア

pagetop